
銀行との取引で知っておくべき「優越的地位の濫用」とは?金融機関も神経を尖らせるルール
前回の当コラムでは、
銀行との付き合い方について解説しました。
特に、
「期末で銀行が実績に困っているのであれば、無理のない範囲で付き合うのも一つの戦略」
というお話をしました。
銀行も営利企業ですから、
-
期末
-
半期
-
決算期
にはどうしても数字に追われます。
そのタイミングで協力できれば、
「恩」を売るという意味で、後々プラスに働くこともあります。
ただし一方で、
-
「銀行に言われたら、断れないの?」
-
「うちはそんな余裕ないんだけど…」
-
「断ったら融資に影響しない?」
と不安になる経営者の方が多いのも事実です。
そこで今回は、
経営者として“知識の武器”として持っておいてほしいルールを解説します。
それが、
**「優越的地位の濫用」**です。
目次
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なぜ「優越的地位の濫用」を知っておくべきなのか
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「優越的地位の濫用」とは何か
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金融機関がこの言葉に神経を尖らせる理由
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融資取引における具体的なイメージ
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過去に問題となった事例
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しつこい営業を受けた場合の対処法
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使うときの注意点(重要)
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よくある質問(FAQ)
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無料相談のご案内
なぜ「優越的地位の濫用」を知っておくべきなのか
銀行と企業は「心理的に」対等ではない
理屈の上では、
銀行と企業は「対等な取引関係」です。
しかし実務の現場では、
-
融資を受けている
-
メインバンクがある
-
資金繰りを銀行に依存している
こうした状況では、
企業側が心理的に弱い立場になりがちです。
経営者としては、
「ここで断ったら、次の融資に影響しないかな…」
「嫌な顔をされたら困るな…」
と考えてしまいますよね。
この心理的な力関係の偏りを是正するために設けられているのが、
「優越的地位の濫用」を禁止するルールです。
「優越的地位の濫用」とは何か
金融機関の内部では“最重要注意ワード”
「優越的地位の濫用」という言葉は、
一般のビジネスシーンではほとんど聞きません。
ところが金融機関の内部では、
-
支店会議
-
コンプライアンス研修
-
日常の営業指導
などで、繰り返し登場する言葉です。
それほど、銀行にとっては
**「絶対に踏み越えてはいけない一線」**なのです。
融資取引を前提にした基本構造
融資取引では、
-
お金を貸す側:金融機関
-
お金を借りる側:企業
という関係になります。
一般的に、
貸し手のほうが立場が強い(=優越的地位)
と考えられます。
そのため、
その立場を利用して
相手に不利益な取引を強要してはいけない
というのが、
「優越的地位の濫用」を禁止する趣旨です。
金融機関がこの言葉に神経を尖らせる理由
一度問題になるとダメージが大きい
銀行がこの言葉に過敏になる理由は、
非常に現実的です。
-
金融庁からの指導・業務改善命令
-
行政処分
-
マスコミ報道
-
地域での信用低下
につながる可能性があるからです。
特に地方銀行や信用金庫の場合、
**「地域からの信頼」**は生命線です。
そのため、
-
営業担当者
-
支店長
-
本部
すべてが「優越的地位の濫用」には
強い警戒心を持っています。
融資取引における具体的なイメージ
グレーになりやすい典型パターン
たとえば、次のような場面です。
「この前、かなり難しい融資を通しましたよね」
「なので、今回は目標未達の●●商品に協力してもらえませんか?」
このように、
-
融資を通した事実
-
融資を続けている立場
を無言の圧力として使い、
商品購入や取引拡大を求める行為は、
「優越的地位の濫用」に該当する可能性があります。
ポイントは、
明示的でなくても、圧力になっていればNG
という点です。
過去に問題となった事例
融資先への投資信託販売問題
数年前、
某地方銀行が融資先企業に対して投資信託を販売していた
という事例が問題になりました。
この件をきっかけに、
-
融資と営業の線引き
-
提案の仕方
-
記録の残し方
について、
金融機関全体が一気に神経質になりました。
現在では、
-
「お願い」という言い方
-
提案書の表現
-
面談記録の作成
まで、細かく管理されています。
しつこい営業を受けた場合の対処法
「優越的地位の濫用」は最終手段
もし、
-
何度断っても続く
-
経営に全くメリットがない
-
明らかに圧を感じる
といった営業を受けた場合、
この言葉を出すこと自体が牽制になります。
「それは優越的地位の濫用にあたりませんか?」
この一言は、
金融機関側にとって非常に重い言葉です。
多くの場合、
担当者は一気にトーンダウンするでしょう。
使うときの注意点(重要)
「正式な融資条件」は別
ここは特に重要です。
その取引が、
-
融資承認の条件として明示されている
-
契約書や条件書に記載されている
場合は、
優越的地位の濫用には該当しません。
つまり、
-
何でもかんでも使わない
-
感情的に使わない
-
あくまで冷静に
が大切です。
伝家の宝刀は、抜く場面を間違えると逆効果
ということですね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 銀行の提案は基本的に断ってもいいのですか?
A. 問題ありません。ただし、理由を簡潔に伝える配慮は必要です。
Q2. この言葉を使うと、関係が悪化しませんか?
A. 使い方次第です。冷静に伝えれば、無理な営業は止まることが多いです。
Q3. 融資条件かどうかはどう判断すれば?
A. 書面で明示されているかどうかが判断基準です。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























